【経理の価値】経理が見るべき5種類の指標

経理/財務

yukiです。
経理は、数字を見ます。
帳簿や、請求書、領収証など。
毎日数字を見ます。

あなたは、自分の会社の数字を見たことがありますか。
取引先の数字を見たことがありますか。

経理は、数字を見ることで、会社の状態が分かります。
取引先の状態を見れば、取引を拡大するべきか、縮小するべきか判断することができます。
自社の状態を見れば、改善点を見つけることができます。
場合によっては、転職をするべきかの判断材料になるかもしれません。

単に売上や利益だけを見ているようでは、本質を見抜くことはできません。
経理としては、どのような観点から数字を見ればよいのか。
それは、次の5種類の指標です。

  • 収益性
  • 安全性
  • 活動性
  • 生産性
  • 成長性

これらをどのようにして算出し、利用していくのかを知ることで、
重宝される経理に大きく前進します。

なお、投資家の視点でもこの指標は利用しますが、重視する数字が異なります。
今回は、あくまでも「経理が改善を目的として見る」ことを前提に進めます。

収益性分析

収益性とは、「企業の稼ぐ力」を指します。
収益性が高い企業ほど、効率よく利益を上げていることになります。
収益性は、さらに「資本収益性」と「取引収益性」に分けることができます。

資本収益性

資本収益性とは、資本と利益の関係性を示し、
「資本を効率よく利用して利益を上げているか」を見る指標です。
100万円を元手に100万円を売り上げる会社と、1億円を元手に100万円を売り上げる会社。
どちらの会社が良いでしょうか。

明らかに前者ですね。
資本収益性は、主に「総資本経常利益率」で判断することができます。

総資本経常利益率(ROA:Return on Assets)

総資本経常利益率は、経常利益を上げるために、総資本をどれだけ活用しているかが分かります。
この数値が高いほど、効率よく総資本を運用していることになります。

総資本利益率(%)= 経常利益 ÷ 総資本 × 100

取引収益性

取引収益性とは、売上と利益、売上と費用との関係性を示し、
「売上の効率がどれだけ良いか」を見る指標です。

10円の利益を得るために、1,000円を売り上げているのか、100円を売り上げているのか。
取引収益性は、主に「売上高利益率」で判断することができます。

分母にどの「利益」を置くかによって、得られる情報が変わりますが、
いずれも数値が高いほど効率よく売り上げていると言えます。

売上高総利益率(粗利率)

売上高総利益率は、売上高に占める売上総利益の割合を示します。
売上高利益率の中でも、もっとも大まかな指標です。

売上高総利益率(%)= 売上総利益 ÷ 売上高 × 100

売上高営業利益率

売上高営業利益率は、売上高に占める営業利益の割合を示します。
企業の核となる営業活動の効率が分かる指標です。

売上高営業利益率(%)= 営業利益 ÷ 売上高 × 100

売上高経常利益率

売上高経常利益率は、売上高に占める経常利益の割合を示します。
営業活動と財務活動を合わせた企業全体の活動の効率が分かるので、重要な指標と言えます。

売上高経常利益率(%)= 経常利益 ÷ 売上高 × 100

安全性分析

安全性とは、「企業の体力」「企業の支払能力」を指します。
自分の会社が大丈夫か、安心して取引できる取引先かを判断することができます。
安全性はさらに、「ストック分析」と「フロー分析」に分けることができます。

ストック分析

ストック分析とは、貸借対照表を用いて、一定時点の資産や負債、資本の関係を確認する分析です。
ストック分析には、主に「流動比率」「当座比率」「固定比率」「自己資本比率」があります。

流動比率

流動比率は、すぐに現金化が可能な流動資産と、
すぐに支払なければならない流動負債の比率を表す指標です。

100%を超えていれば流動資産が上回っているので安全であり、
この数値が高いほど、短期的な支払能力が高いことが分かります。

流動比率(%)= 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

当座比率

当座比率は、流動資産から商品などの棚卸資産を控除した当座資産と、
流動負債の比率を指す、流動比率と性質が似た指標です。

流動資産の中でも現金化がより早い当座資産を用いることで、
短期の支払能力がより正確に表れます。

当座比率(%)= 当座資産 ÷ 流動負債 × 100

固定比率

固定比率は、固定資産が自己資本で賄われている比率を示す指標です。
固定資産は通常、直接的に収入を生むものではありません。
減価償却で長期間にわたって資金を回収していくことになりますので、体力が必要になります。
ですから、一般論として企業は、100%を下回ると安全と言うことができます。

固定比率(%)= 固定資産 ÷ 自己資本 × 100

自己資本比率

自己資本比率は、総資本のうち自己資本の占める割合を示す指標です。
この数値が高いほど、借金や負債の割合が低くなるので、安全な運営を行っていると言えます。

自己資本比率(%)= 自己資本 ÷ 総資本 × 100

フロー分析

フロー分析とは、キャッシュフロー計算書を用いた一定期間の資金の流れを確認する分析です。
単に「キャッシュが増えた」という事実だけでは、要因を把握することはできません。
そこで、キャッシュフロー計算書の中にある「営業」「投資」「財務」に分けて分析します。

営業キャッシュフロー

営業キャッシュフローは、本業である営業活動のキャッシュの増減を表しています。
売上が好調でも売上債権が増えれば、資金繰りは悪化します。
売上代金の回収よりも支払代金が増えても、資金繰りは悪化します。
ですから、この項目がプラスであれば本業が順調である目安になります。

投資キャッシュフロー

投資キャッシュフローは、固定資産や株式の取得及び売却によるキャッシュの増減を表しています。
固定資産や株式を購入すればキャッシュが減るのでマイナスの要因になりますし、
反対に売却すればキャッシュが増えるのでプラスの要因となります。
プラスになっている場合は、通常の投資活動によるものなのか、
資金調達のための売却なのかを見極めることが重要です。

財務キャッシュフロー

財務キャッシュフローは、融資や返済、株式・社債の発行や配当の支払いなど、
企業の財務活動によるキャッシュの変動を表しています。
マイナスの要因としては、返済や社債の償還などが挙げられ、
プラスの要因としては、新規の融資などによる資金調達があります。

活動性分析

活動性とは、「企業経営の活発の度合い」を指します。
売上に対する資産の使用効率が高いほど、活動性が高いと言えます。

主な指標として、
「総資本回転率」「商品回転率」「売上債権回転率」などが挙げられます。

総資本回転率

総資本回転率とは、資本を効率的に運用して営業活動ができているかを示す指標です。
この数値が高いほど、効率よく資本を運用していることになります。

総資本回転率(回)= 売上高 ÷ 総資本

商品回転率

商品回転率とは、売上に対する在庫量の効率性を確認する指標です。
この数値が高いほど、商品を効率よく売り上げていることになります。

商品回転率(回)= 売上高 ÷ 商品

売上債権回転率

売上債権回転率は、売上に対する売上債権の割合の適性を確認する指標です。
この数値が高いほど、債権回収が早いということになります。

なお、先に挙げた総資本回転率や商品回転率の適性は業種によりますが、
売上債権回転率は6回転以上(1年で6回転、つまり2ヶ月以内に回収するサイクル)であると、
資金繰りが安定します。

売上債権回転率(回)= 売上 ÷ 売上債権

生産性分析

生産性とは、「売上や付加価値の創出力」を指します。
「付加価値」とは、企業が新たに生み出した価値のことであり、いくつか算出方法がありますが、
ここでは分かりやすく「粗利益」を用いて説明します。

生産性を分析することで、企業が効率よく売上や付加価値の創造をできているかが分かります。
主に、「労働生産性」によって判断することができます。

労働生産性

労働生産性とは、従業員1人あたりが生み出す付加価値を確認する指標です。
同じ付加価値を生み出す会社であれば、従業員数が少ないほど労働生産性が高いと言えます。

労働生産性(円)= 付加価値 ÷ 平均従業員数 

成長性分析

成長性とは、「企業の成長過程」を指します。
前期と比較した伸び率を見ることによって、どのように成長しているのかが分かり、
今後の成長の可能性の指標となります。
主に、「売上高伸び率」「経常利益伸び率」で確認することができ、
複数年分の指標を並べた推移を見る方法が基本です。

売上高伸び率

売上高伸び率は、当期の売上が前期に比べてどの程度伸びたかを確認する指標です。

売上高伸び率(%)=(当期売上高 - 前期売上高)÷ 前期売上高 × 100

経常利益伸び率

経常利益伸び率は、当期の経常利益が前期に比べてどの程度伸びたかを確認する指標です。
売上高伸び率と比較すると、成長の詳細な要因をつかむことができます。

経常利益伸び率(%)=(当期経常利益 - 前期経常利益)÷ 前期経常利益 × 100

まとめ:分析を改善に役立てよう

分析の指標は、業界によって平均値が異なります。
例えば、製造業では製造のための設備投資が必要ですし、
運送業では配送のために車両運搬具等が必要になります。

固定資産の購入金額も違いますし、耐用年数も違いますので、
固定資産の数字を用いた指標の基準値にも差が生じます。

ですから、分析を行う際には同業他社の数値も参考にしましょう。
そうすることで、より正しく分析結果を扱うことができます。

また、分析をしたら与信の材料にするなり、改善の材料にするなり活用しましょう。
特に自社の分析については、そこで終わらせてしまっては意味がありません。

「商品回転率が高いので、在庫に厚みを持たせれば売上が伸びると思います。」
「資金効率のためにも、売上債権回転率の改善に力を入れます。」

その一言で、経理としての価値を高めましょう。

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